静岡県のお茶の魅力を詰めた『お茶フリアン《薫居- kaori -》』が2022年4月23日(土)より新たに登場しました。
茶所・静岡のお茶の美味しさとそれに懸ける茶農家さんの想い、【身土不二】の精神のもと菓子作りをするたこまんの想いを凝縮した『薫居』について、全4回に渡りご紹介します。今回はその2回目です。
【静岡県での茶農業の歴史】
鎌倉時代から始まった静岡県での茶農業が、大きく発展したのは明治時代と言われています。
明治維新後、職を失った武士などにより牧之原台地(牧之原市・菊川市・島田市)の開墾が進められました。牧之原台地の気候や土質が茶の栽培に適していたこともあり、茶畑の面積が増えるにつれて生産量が大きく伸びていきました。さらに1899年(明治32年)に清水港が開港したことにより海外への静岡茶の輸出が始まります。また東海道鉄道の開設も追い風となり、国内外に静岡茶が普及していきました。
こうして、日本一の生産量を誇る【静岡茶】のブランドが確立していきました。
【静岡県のお茶の魅力】
静岡県には山間部・平地・沿岸部の地形があるため、様々な気候や風土が存在します。その中でお茶自体の味、風味も変化します。
例えば、温暖で気温の変化が少ない沿岸部では、香りが良くさっぱりとした味のお茶になります。一方、寒暖差が大きい山間部では、昼間光合成した葉が夜の冷気によって休まり、養分が蓄えられることで、コクと甘みが引き出されます。
同じ種類の木でも気候、風土によって異なる風味となり、またそれぞれに適した栽培方法があります。また、お茶自体の味や性質が異なれば、適した製茶方法も異なります。各地域で気候や風土に合わせた栽培技術・製茶技術を確立していくことにより、静岡茶は品質と多様性を高めてきました。このようにして、生産量だけではなく、品質の高い静岡茶を創り上げていきました。
【静岡県の茶農業の現状】
長らくお茶の生産量日本一を誇ってきた静岡県ですが、近年その様相が変化しています。
2019年に鹿児島県のお茶の産出額が静岡県を抜いて日本一になりました。静岡県での産出額は、最も多かった昭和60年と比べて30%にまで減少。茶農家さんの件数は17%まで減少しています。
これらの背景には日本でのお茶の消費量が減少したこと、茶農家さんの高齢化・後継者不足、山間部での作業も多く大型の機械が導入しずらいことなどが挙げられます。
このような中、「静岡茶の本当の美味しさを日本全国、世界に発信しよう」の声が高まり、農家さん・加工業者さん・卸業者さんが一体となった新たな魅力作りの動きも次第に大きくなってきています。
【有機栽培の静岡茶】
静岡県内でもお茶の有機栽培の機運が高まっています。
近年、欧米を中心に、健康食品としての抹茶への注目が高まっています(海外でも「matcha」で通用するそうです)。茶葉に含まれるカテキン・テアニン・ビタミン・食物繊維が体に良く、それらを丸ごと摂取できる抹茶は【和のスーパーフード】と呼ばれています(煎茶では茶葉に含まれる栄養成分の3割程度しか抽出されないと言われています)。あるお茶屋さんでは、海外での売上が総売上の3割にも上るそうです。
海外へ静岡茶を輸出する際に重要視されること、それが【有機栽培】です。有機栽培は健康志向・環境保護・動物保護の観点から、欧米では非常に注目されています。特に抹茶は茶葉をまるごと粉砕して摂取するため、農薬を使用しない有機栽培が非常に重要視されるのです。
有機栽培の認定は大変厳しく、農地に残った残留農薬はおろか、近隣の畑から風で飛んできた農薬、虫よけスプレーすらも使用することはできません。他の畑からの農薬等の影響を避けるため、お茶の有機栽培は山間部で行われることが多いです。こんなにも厳しい基準がありますが、農家さんは「体に良いもの」「環境に良いもの」「持続可能な農業」を目指して取り組まれています。
現在では、農家さん・加工業者さん・卸業者さんが一体となり、静岡県内で有機栽培から加工まで行う取り組みも動き始めています。
私たちたこまんも茶処・静岡にある菓子屋として、静岡茶の魅力や美味しさを発信し、静岡茶の価値を知って頂くと同時に、静岡県の茶農業に貢献する使命があると考えています。これからも菓子作りを通し、地域茶農業の活性化、地域貢献ができるよう努めて参ります。