お彼岸(春・秋)

牡丹の花

お彼岸は毎年春と秋の2回ある、ご先祖様を敬う期間です。春は「春分の日」の前後3日間、秋は「秋分の日」の前後3日間をいいます。

【「お彼岸」とは】

「お彼岸」とは、「到彼岸(とうひがん)」という意味で、煩悩や迷いのある世界から悟りの開けた世界へ至ること、至るために行う修行の事を指します。

仏教では元来、煩悩に満ち溢れるこの現世の世界を「此岸(しがん)」と呼びます。それに対して、あの世の世界を「彼岸(ひがん)と呼びます。「此岸」とは「こちら側の岸」という意味で、「彼岸」は「あちら側の岸」を意味します。こちらの岸とあちらの岸の間には川が流れており、それが生と死の世界を隔てる「三途の川(さんずのかわ)」です。川は仏教にとってとても象徴的な場所で、生と死を分けるだけでなく、煩悩と悟り、俗世と来世を分けるものとされています。

また、古代の中国では、お彼岸に太陽が沈む真西の方角に、極楽浄土があると信じられていました。太陽が東西へ一直線に動く「春分の日」と「秋分の日」は、この世(此岸)とあの世(彼岸)が最も通じやすい日と考えられ、死者を偲ぶ日、来世を偲ぶ日としてとらえられるようになりました。

このように、太陽の動きや天文学と浄土信仰が合わさって、「お彼岸」という風習が成り立ってきたのです。

【お彼岸の期間】

上でご紹介した通り、お彼岸は春と秋の年に2回あります。

春は「春分の日」を中心とした前後3日間の合計7日間

秋は「秋分の日」を中心とした前後3日間の合計7日間

「春分の日」「秋分の日」は太陽の動きに影響を受けるため、必ずしも毎年同じ日になるわけではありません。
(春分の日→3/20or3/21、秋分の日→9/22or9/23)

2023年秋のお彼岸は9月20日(水)~9月26日(火)です。

【お彼岸中にすること】

お彼岸中にはお墓参りに行って先祖供養をします。お墓参りの日は春分の日、秋分の日がベストとされていますが、厳密には決まっておらず、お彼岸の期間中にお参りをします。

【「暑さ寒さも彼岸まで」】

季節の移り変わりを示す言葉で「暑さ寒さも彼岸まで」というものがあります。

春分と秋分は、いずれも季節の移り変わりを示す「二十四節気(にじゅうしせっき)」のひとつで、暦の上では春と秋の折り目となります。春分と秋分は、昼と夜の長さが程同じになりますが、春分以降は昼が長くなるため寒さが和らぎ、秋分以降は秋の夜長に向かうため涼しくなっていきます。こうして彼岸を迎えれば厳しい残暑や寒さに目処が付くため、「暑さ寒さも彼岸まで」と言うようになりました。

【「ぼた餅」と「おはぎ」】

お彼岸には「ぼた餅」や「おはぎ」をお供えします。

ぼた餅やおはぎに使われているあんこの原材料は小豆です。

赤い色の小豆は、栄養価に優れているだけでなく、縁起物とされた大変高価な食材でした。古代中国から赤色の魔除けや長寿を願う色とされてきたためです。まそのため、死者や祖先を偲ぶお彼岸に、小豆をたっぷりと使ったあんこで作られたお餅をお供えするようになりました。

「ぼた餅」も「おはぎ」のどちらも、同じお餅を小豆餡で包んだ和菓子ですが、春は春に咲く牡丹にちなんで「ぼた餅」、秋は秋に咲く萩にちなんで「おはぎ」と言われます。また、小豆は秋に収穫されるため、春は固くなった皮を取ったこし餡、秋は皮ごと使った粒餡を使っていました。そのため、本来ぼた餅はこし餡、おはぎは粒餡を使って作っていました。

※現代では小豆の保存技術や加工技術が発達したため、春でも美味しい粒餡を食べる事ができるようになりました。

萩の花

ご先祖様を敬い、季節の移り変わりの中で培われた日本ならではの風習を、いつまでも大切にしていきたいものですね。